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第25話 エリーの大切な想い

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-09-10 06:00:21

 フェルシアの作ってくれた料理は、美味しくて、食べるたびに心がほっと温まる。香りからして食欲をそそられ、一口口に運ぶたびに、丁寧に仕込まれた味が広がる。「いつもありがとうな。フェルシアの料理は、いつも最高においしいなー!」そう伝えると、彼女は少し照れくさそうに微笑んだ。

「あのですね、実は……それ、エリーさんが手伝ってくれたんですよ?」と、フェルシアが穏やかな口調で教えてくれた。

「ふっふーん♪ 頑張って作ってみました! 味付けも全部、フェルシアさんに教わって……ですけれど。」エリーは初めて見る自慢げな表情を浮かべ、得意そうに言った。しかし、その誇らしさも一瞬のことで、すぐに彼女らしい落ち着いた雰囲気に戻ってしまった。

「いや、エリーは覚えが早いし、丁寧に作ってくれるだろ。それに……教えた俺よりも、ずっと上手になってる。フェルシアの料理を全部覚えたら、料理人にも匹敵する腕前になるんじゃないか?」と、優しく笑いながらエリーに言った。

「わっ、本当ですか? そんな風に褒めていただけるなんて……」エリーは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに顔を赤らめ、恥ずかしそうに俯いた。「けれど、それもフェルシアさんが丁寧に教えてくださったおかげです。わたし、一人では絶対にここまでできませんでしたから」と真面目な表情で付け加えた。

 そんなエリーを、フェルシアは穏やかな笑みで見つめていた。「謙虚なところはエリーさんらしいですね。でも、ちゃんと自分の努力を認めてもいいと思いますよ」そう優しく声をかけると、エリーは恥ずかしそうに目を伏せながら、控えめに小さく頷いた。

 フェルシアにお礼を言い、店を後にしようとすると、ユナが少し眠たそうに目をこすりながら声を掛けてきた。「今日は疲れちゃったから……ここで寝ても良いかなぁ? 明日も来るんでしょ? レイと一緒に寝る約束しちゃったしぃ……」と、微笑みながら甘えるように言った。

 フェルシアを見ると、彼女が静かに頷いてくれたので、エリーと二人で店を後にすることにした。帰り際、ユナが小走りで近づいてきて、「そうそう、裏庭の野菜に水やりを頼んでもいいかなぁ? えへへっ♪」と、ちゃっかり自分の仕事をお願いしてきた。

 ユナの頭を優しく撫でて頷くと、「ユウ兄ぃ……かがんでっ♪」と服の袖を引っ張られた。素直に屈むと、彼女は「お礼ねっ♪」と微笑みながら囁き、ちゅっ♡ と軽く唇を重ねてきた。その無邪気な仕草に、思わず胸が温かくなる。

「ユナちゃん、ずるーい。」隣で見ていたエリーが、微笑みながら軽く頬を膨らませてそう言った。その表情には、どこか楽しげな雰囲気も混じっている。

 夜の帳が下りる中、森を抜けてエリーを抱きかかえながら帰宅した。静かな家の中では、夕食もすでに済ませ、ただ寛ぐだけの時間が流れる。

 だが、不思議なものだな。最近はユナと一緒にいることが当たり前になっていたせいか、彼女がいないだけでぽっかりとした寂しさを感じる自分がいる。

「ユウさん、ミリーナさんとは仲良くできていますか?」

 エリーが、どこか心配そうな表情でそう尋ねてきた。

 どう答えたものかと迷っていると、彼女の表情がふと明るくなり、少し身を乗り出してきた。

「手は……握ったんですか? それとも、キスなどに進展してます? お嫁さんに……できそうですか?」

 どこか恋愛話を楽しんでいるような口ぶりだ。いや、それどころか——ほんのりと興奮しているようにも見える。

 エリーのそんな様子に、少し戸惑いつつも、つい笑ってしまう自分がいた。

「まあ、キスはしたな……」

 そう答えると、エリーの瞳がぱっと輝いた。

「わぁ……どのように、だったのでしょうか? 詳しくお聞かせください♪」

 期待に満ちた笑顔と前のめりな姿勢。無邪気な好奇心が全開だ。

「……いや、さすがにそこまで詳しくは……」

 と濁すと、エリーはぷぅっと頬を膨らませて抗議してくる。

「むぅ……ユウさん、教えてくれないのですか? ……まあ、妬けますけど。でも、必要な方ですし」

 そう言って、少し照れくさそうに顔を赤らめる。

 そしてすぐに、また表情を輝かせながら、

「ということでですね、恋愛のお話のように、しっかりお聞かせくださいね♪ 楽しまなきゃ損です!」

 と、ニコニコと笑ってくる。

 ——まったく、押しが強い。

 エッチな話は避けつつ、ミリーナが甘えてきたことや、いまではかなりベッタリな関係になっていることを話してやると、エリーは興味津々といった様子で身を乗り出してきた。

「わぁ、それってすごく素敵ですね! ミリーナさん、ユウさんのこと、本当に信頼してるんですね♪」

 無邪気に微笑むその表情は、どこか嬉しそうでもあり、少しだけ寂しげにも見えた。

 そして——ふいに表情を曇らせ、言いにくそうに口を開いた。

「あ、あのぅ……どちらのキスが……良かったのでしょうか?」

 真剣なまなざし。その瞳に迷いが浮かんでいる。

 だから、俺は迷わず言った。

「それは、エリーに決まってるだろ」

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